福岡高等裁判所宮崎支部 昭和27年(う)387号 判決
しかし、権利の行使は法律の認める範囲内においてのみ許容されるものであるから、その範囲を逸脱した場合は、その逸脱した限度において権利の行使に属しないから、犯罪行為を組成すること勿論である。そこで、今原判示第三の(一)掲記の事実につき、原判決の挙示する証拠を綜合すれば、被告人は原判決認定のように、他人の債権取立のため、被害者に対し、ジヤツクナイフをその面前に差しおき、「もう金も証文もいらん、おれと勝負しろ」。などと云つて、その債務を弁済しなければ、身体に危害を加えるような態度を示して被害者を脅迫したことが首肯し得られるので、その被告人の所為は、前説示するところにより権利行使の範囲に属せず、脅迫罪の成立すること多言を要しないところである。さすれば、原判決が被告人の右所為を脅迫罪に問擬したのは相当であるから、原判決には所論のように事実誤認乃至擬律の錯誤は存在しない。それ故論旨は採用しない。